雨の朝、深紅の瞳の少女は
滅びた都に還る

ひとりぼっちで
傘も持たずに

崩れた『神を寿ぐ塔』の　わずかに残った石段に腰掛け
涙を流し　呪詛を吐く


いつの間にか少女にさしかけられる黒い傘
男が少女に尋ねる


「貴女が滅ぼした街を見た感想はどうですか？」


少女は肩を震わせ　一言だけ答える


「傘はいらないわ……」


柔らかな栗色の髪に雨を吸い込み
雫を滴らせ
彼女はいつまでも泣いている

男もいつまでも立っている

優しく　雨は　降りしきる