蒼い森









蒼い森の中で　月の光浴びて
手をつないでるのは　ねぇ　まだ夢のつづき？




「……英二」
　ボクだけの恋人は、そんな呼びかけに気づきもせずに、深い深い眠りの中にいる。安らかに上下する胸。──長い間日光に全く当たっていないせいで、陶器の様に白くなった瞼はぴくりとも動かない。

　そんな英二を、月の光が優しく照らしている。

「英二」
　ボクは、ぐったりと力の抜けた英二の体を抱き起こし、強く抱きしめる。柔らかな髪から、シャンプーのいい香りがする。

──ざあ、ぁぁぁぁ……

　森がざわめく。月の光の下の蒼い森の中で。ボクたちを責めるように。ボクたちを守るように。

　ねえ、静かにしてよ。ボクの英二が起きてしまったらどうするの？


　朝が来て、昼に近くなって。ようやくボクのお姫様は目を覚ます。とろんと薄膜の張ったような瞳で。ふらつく足で、食堂に姿を現す。
　食堂は、まさに森の只中にある。三方が窓。そこから見えるのは、ただただ深い森。どこまでも絶えることの無い永遠の森。日光はその木の葉たちに遮られて、この部屋まで届かない。薄暗い食堂には、英二のための朝食が並べられている。

「あ、おはよう……不二。また、食事、作ってくれたの？」
「おはよう、英二。さ、早く食べて。お昼になっちゃうよ」
「ごめん……にゃ。何だか眠くて……すごく、眠くて……」
「いいよ。好きなだけ寝ていていいよ。でも、栄養はとらなくちゃ、ね？」

　英二はふらふらと椅子に座り、コーンフレークにミルクをかける。もう冷めてしまったオムレツに手を付ける。
「あ……れ？」
「どうかした？」
「このミルク、味が……変。悪くなってるのかな」
　ボクは持っていた雑誌を置いて立ち上がる。英二のコーンフレークに指を浸し、少しミルクを舐めてみる。
「そうだね、少し、苦いかな」
「でしょ？　うーん、腐ってるのかな。こないだ不二が買ってきてくれたばかりなのに」
「これは食べなくていいよ。処分しよう。──オムレツは、ちゃんと食べるんだよ？」
「うん！　不二もオムレツつくんの上手いにゃ……でも、俺だって作れるのに。『ここ』に来てから、ご飯作るの不二ばっかりで、悪いなって……」
「だって、英二寝てばかりいるじゃないか。英二を待ってたらお腹がすいてしょうがないよ。だから、先に作って待ってるんだ」
　英二は、少ししょんぼりとした顔をする。
「ゴメンね……。俺、どうしちゃったんだろ。眠いし、眩暈はするし……今だって……そう。何だか、もう、座ってられな……」
「おいで、英二」
　ボクは、オムレツを食べ終わったことを確認してから、英二をそっと抱いて、ソファに寝かせる。
「うー、気持ちいい。不二の膝枕」
　ボクの仔猫は、ふわふわの頭をボクの膝に擦り付ける。
「眠っちゃってもいいよ」
「ん……でも、起きていたい」
「どうして？」
「だって、今日は不二、お仕事の日でしょ？　……眠ってる間に、不二が居なくなっちゃうの、寂しいんだもん」
　ボクは微笑む。『寂しい』と言ってくれる、このボクの可愛い恋人がいとおしくて。
「すぐ、帰ってくるよ。おとなしく、待っていて」
　そして、英二の額にキスをして。
「外に出ちゃ、ダメだよ。ここはすごく深い森の中なんだ。出歩いたら、すぐに道に迷ってしまうよ。もうここに帰れなくなる。……もう、ボクに会えなくなる。嫌だろ？　そんなの」
「うん、嫌」
　素直な、素直な英二。
「それに、俺どうせ眠ってるもん。次に目を覚ましたら、不二はもう帰ってきてるよね」
「そうだよ」

「だから、安心して、ぐっすり眠っていればいいんだよ、英二は──」

　10分も経たないうちに、英二はボクの膝で寝息をたてはじめた。ボクは、そっとその頭をクッションに乗せかえると、出かける準備を始めた。

　ボタンダウンのシャツに、ニットタイを締めて。鏡に向かって髪を整える。
　そして、カバンを持ち、玄関の鍵を厳重に閉める。
　内鍵は、この家に引っ越してきた時から壊されている。ボクの手によって。

　ボクは、深い森を、蒼い森をどこまでも歩いていく。ボクだけが知っている、秘密の道を通って。



風の林抜けて　枯葉を踏みしめて
心解き放てば　ほら　笑顔になれるの



　駅で特急を待つ。東京まで３時間の道のりだ。列車に乗り込んで、文庫本を読んで。風景は変わる。綺麗な緑の林が次第に汚らしい色合いのビルに代わる。列車は次第に込み合う。鬱陶しい、人いきれ。

　英二のためとはいえ、これは少し嫌になるね。
　そして、これからの仕事も。


「不二、お前また指名入ったぞ」
　『同僚』の少年が受話器を放り出す。
「すげーな、今日３人目じゃんかよ」
「ボクはあんまりここに働きに来られないからね。稼げる時に稼いでおかないと」
　ただニッコリしてやりすごす。
「不二は綺麗だもんなー。俺、こんな世界にいるから綺麗な男はいっぱい知ってるけど、不二ほど綺麗な奴、見たことないよ」
　飲み物を勧めながら、同僚の少年はそう言う。
「そうかな？　ボクはもっと綺麗な子を知ってるよ？」
「へえ。お前がそう言うんなら……でも、どれくらい綺麗なんだろうな、そいつって」

「──誰にも教えたくないくらい、綺麗だよ」

　ボクは指名の入った先のホテルへ向かう。待っているのは、男に性欲を持つ種類の男。
　しばしの時間、名前の無い男に抱かれて、一万円札を何枚か受け取る。
　店に帰って、そのうちの何枚かを差し出す。
　これが、ボクの仕事。

　英二と出会ったころのボクには考え付きもしないような、汚れた仕事。


「なあ不二！　呑みに行こうぜ。お前、全然俺たちに打ち解けないじゃん！」
　世間では美少年といわれるであろう、ボクの『同僚』たちがボクに声をかける。
「お前の言ってた、お前より綺麗な奴の話も聞かせてくれよ！」
　決して悪い奴らじゃない、人懐っこい少年たち。ボクは「残念だけど」と苦笑する。
「え、何でだよ。お前相当稼いでるのに、全然遊びにも行かないじゃないか。たまには、綺麗なねえちゃんに囲まれてぱぁっとやろうぜ」
　ここに来ている少年たちは、ほとんどが異性愛者だ。
「ごめんね。ボクは、これから用事があるんだ」
「用事って、なんだよ」
「病院」
「……」
　ボクを熱心に誘ってくれていた少年が、すまなそうな顔をする。
「ご、ゴメン。お前、どっか悪いの？」
「いろいろとね。病院、ハシゴしてるんだ」
「へえ。カラダには気をつけろよな」
「ありがとう」

　そして、ボクは本当に病院をハシゴする。１５軒ばかり。

「不二さん」
　アナウンスの声に導かれて、ボクは診察室に入る。
「先生、この間貰ったお薬、苦かったんですけど」
「……そうでしたか？」
「ええ。ボクは言ったはずですよ。ほんの少しでも苦い薬は飲めないって。なのに……」
「ああ、すまないね。じゃあ、安定剤を変えよう。これなら、少し甘みは在るけど」
「甘いのもダメです、先生。本当に苦手なんです、薬は。味のないものにしてください」
　医師は顔をしかめる。
「そうは言っても、薬なんだから……。君の症状に合う物を考えて出しているんだ。少しは我慢をしてもらわないと」
　ボクは笑む。
「先生」
　無骨な医師の手に、ポケットから取り出した、むき出しの一万円札を数枚押し込む。
「君は……！」
「無味無臭のもの、をお願いします」
　医師は顔色を変え、ボクをギョッとした眼で見る。
「何に使う気なんだ。私は、医者として、犯罪には──」
「ボクは苦い薬が苦手なんですよ」
　もう数枚、しわくちゃの紙幣を増やす。
「お願いします」
「……分かった」


　まるで、主婦の持つようなセンスの無い買い物カバンを提げて、駅への人通りの多い道を急ぐ。カバンの中には、『無味無臭の』薬が溢れている。重くは無いけれど、何しろかさばる。
　最終電車を逃すと、ボクの仔猫のもとへ帰れなくなってしまう。それは、もちろんボクにとっても辛いことだし──彼にとっては、もっと辛い……命にさえ関わることになる。ボクは彼を決して苦しい目に合わせたりしない。

　いつまでも、いつまでも甘い夢の中で、たゆたわせてあげるよ、英二。

　改札口へ急ぐ。切符を取り出そうと立ち止まったボクの肘を、誰かが掴んだ。
「不二」
　そう呼ばれて、ギョッとして振り返る。聞き覚えのある──ありすぎる、声。懐かしい声、と言ってもいい。こんな時じゃなければ。
「不二だな？　不二なんだな」
　ボクは掴まれた肘を振りほどこうともがく。長身の彼はもう片腕で僕の肩を掴む。
「不二！」
「……乾」
　最終電車が出ようとしている東京駅。いつも人でごった返しているここで、こんな風に知り合いに出会ってしまうことを警戒していなかったわけじゃない。
　でも、今日は油断していたかもしれない。いつも東京ではかけていたサングラスも外していた。
「お前……どうして、何のつもりで、何で今まで」
　上手く言葉が出てこない、といった風に乾は急き込んだ感じで言う。
「乾。急いでるんだ、手を放して」
「お前が消えてしまってから、何年経つと思ってるんだ。みんな……それから、ご家族が、どれだけ心配して」
「手を放せ」
「菊丸は！　英二はどうしたんだ！」
　ボクの顔に、きっと動揺の色が広がってしまっただろう。乾は人ごみの中で、彼らしくもなく──そうだな、あれから……ボクと英二が蒼い森の中へ溶けてしまってから、何年が過ぎたんだろう、そんな何年ものブランクを差し引いても彼らしくなく──怒鳴った。
「お前は菊丸をどうしたんだ！！」
　行き交う人々が、その大声に足を止める。ボクは舌打ちをする。ざわめきの中から、アナウンスが聞こえてくる。
『長野方面最終、１１:１５発、まもなく──』
　もう迷っている時間は無かった。ボクは、手を伸ばすと、相変わらずの乾の四角い眼鏡を奪った。そして、人差し指をその瞳に向かって突き出した。硬い、濡れた、嫌な感触。乾は呻いて、ボクの肩から手を放し、眼を押さえた。ボクはカラダを翻して走り出す。改札を抜け、エスカレーターを駆け上がり、列車に滑り込む。程なく列車のドアが閉まる。ボクは闇に眼を凝らす。ホームまで乾が追いかけてきた様子は無い。

　ボクはようやく肩の力を抜いて、ずるずると列車の床に座り込む。気づくと、まだ左手に乾の眼鏡を歪むほどに強く握り締めている。それを買い物カバンの中に放り込んで、ボクは荒い息をつく。

──誰にも、邪魔させやしない。
──誰も、ボクたちの中に入れやしない。

　英二はボクのものだ。ボクだけのものだ。

　ネオンサインの煌きがだんだん数を減らして、闇だけが窓の外を駆け抜ける。ボクは冷たい窓ガラスに頬を寄せて、初めて英二とこの列車に乗ったときのことを思い出す。
　君は、僕に飲まされた大量のアルコールで、人事不省に陥っていたね。何度も嘔吐した。意識の無いまま。
　ボクは、何日かを、君に口移しでアルコールを飲ませながら、ボクのうちの別荘で過ごした。でも、そのままそこにいたら、いずれ追っ手が来ることは分かっていた。ボクは、放任主義の家庭で持たされていたキャッシュカードを使って、あちこちのＡＴＭから限度額の現金を引き出し続け、更に山奥の貸し別荘を借りた。

　英二、君のカラダは、無理矢理飲ませ続けたアルコールでぼろぼろだったね。だから、ボクは君にもっといいものをあげることにしたんだ。

　ユメミルクスリを。


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Don't be afraid, BABY


and I love you


　君の飲むミネラルウォーターに、君の食べる全ての料理に。ボクは乳鉢で磨り潰した薬を混ぜ続けた。強い精神安定剤を。抗鬱剤を。君が意識を無くして眠ってしまうまで。君がどこへ行く気力も無くなるまで。

──君がボクに逆らう力を失くす、その時まで。

　基準値の１５倍の薬を、君はもう何年も飲み続けている。意識には常にレース編みが懸かり、一日の４分の３を眠って過ごす。それでいいんだ。
　君は、ボクのものなんだから。


蒼い森の中で　人知れず咲く花
一緒にいなければ　届かない幻ね


　森の中の小径を通って、ボクはボクたちの隠れ家に向かう。今日は嫌なことがあった。君の安らかな寝顔に癒されて、眠りにつきたい。

　鍵を開けると、玄関に英二が座り込んでいた。瞳は憔悴し切っている。額に冷や汗。膝が震えて、じっとしていられない様子で。
「英二！？　どうしたの。玄関の側に来ちゃダメだって言ってあるのに……」
「ふ……じ……」
　君のアーモンド形の瞳に、涙が盛り上がって。
「ごめ……苦しくて。何だろ、カラダ、ざわざわして、汗が出て……立ってられない。気持ち悪い……」
　君は自分のカラダを抱いて、ぼろぼろと涙を零した。
「英二。ちゃんと、決められた水を飲んだ？　ボクの作ったご飯を食べた？」
　英二の肩を抱く。パジャマは、汗でしっとりと湿っている。
「不二……水、入れといてくれた瓶、割っちゃって……でも、ノド渇いて……だから、水道の水を飲んで……だからかな、こんなに苦しい……不二、ダメって言ってたのに……決められた水以外を飲んだら、苦しくなるって……」
　英二の苦しみは、『静坐不能（アカシジア）』だ。精神病薬の効果が切れたための、禁断症状。ボクは、クスリ関係の本を読み漁ったので、そんな知識を持っている。
「大丈夫、英二。苦しかったね。君の苦しみを無くす薬をボクは持ってる。さあ、これを飲んで……」
　ボクは、カバンに手を突っ込み、一掴みの安定剤を取り出そうとする。そのとき、コトリと音を立てて、何かが床に落ちた。
　乾の眼鏡。
「あ……」
　英二は、涙に濡れた眼を見開いた。ボクは、すぐにそれを拾い上げようとしたが、英二の震える手が先にそれを取った。
「……いぬ……い……」
　ボクは君を見守る。クスリの靄から放たれて、激しい苦しみの中にも正気を取り戻している君を見る。
「……乾！」
　君は叫ぶ。
「乾……手塚。タカさん、……海堂、桃……おチビ」
　記憶の奔流が君を襲う。
「大石……！」
　君の眼がボクを見上げる。
「ここは……どこなの」
　戸惑いと、不安と、疑惑の瞳。
「何で、俺はここにいるの」
　ああ──今日は嫌なことばかり起こる。
「みんなは何処？　俺、どれくらいここにいたの！？　不二はどうして──」
「英二」
　ボクはできるだけ優しい声を出す。
「苦しいだろう？　クスリを飲んで。それから、ゆっくり話そう」
「やだ！」
　クスリの包みを差し出したボクの手を、君は振り払う。
「何のクスリなんだよ、それ！　俺、ずっとぼうっとしてた。眠たかった。何が何だか分かってなかった。不二、答えろよ！　ここ、何処なんだよ！！」
　君は、アタマを掻き毟る。
「不二は俺に何をしたんだよぉ！！」
　ボクは、黙って立ち上がった。そして、英二の白い頬を張り飛ばした。
「！……い、っつぅ……何を……」
　苦しみの中で、尚も反抗の心を失わない君の、胃の辺りを思い切り蹴り上げる。
「がっ！」
　咳き込む君の襟首を掴みあげ、もう一度頬をはたく。そして、アタマを床に打ち付ける。
「ち……くしょう……」
　君は僅かに逆らおうと、ボクに手を伸ばす。でも、その手は冷や汗に濡れて、震えている。そんなか弱い手で、ボクに何かできるとでも思ってるの？
「英二」
　回し蹴りの要領で、ボクにすがりつく君を床に転がす。
「英二、苦しいだろう？　痛いだろう？」
　うずくまる背中を、何度も何度も蹴りつける。容赦なく。君のカラダに蒼い内出血が刻まれるほどに。
「怖いだろう？」
　ヤメテ、と君はつぶやく。ヤメテ、痛い……ヤメテ。
「クスリを飲むんだ」
　髪を掴んで、額を床に何度も叩きつけ、そのままアタマを踏みつける。体重をかける。
「飲むね？」
　痛い、許して、ヤメテ。君はうわごとの様に言う。ボクは、クスリの包みを破り、２０錠ばかりの白いクスリを、英二に差し出す。
「水なんてなくても飲めるよ。だって──」

　無味無臭のものばかりなんだから。

　口の中を切ってしまったらしい、血に塗れた唇の綺麗な君は、ボクから受け取った錠剤を噛み砕いては呑みこむ。時折咳き込むと、ボクは君の背中を優しく擦る。
──さあ、しっかり飲み込んで。クスリの眠りの中に帰るんだ。
──ボクの側に、ずっと居るんだよ。



together forever



　英二の体から力が抜けた。冷や汗と震えが引いていく。静坐不能（アカシジア）は治まったらしい。そして、ボクに対する恐怖心をも、クスリは奪い去ってくれる。
　当然だよね。それくらいの効能は期待したいよ。君のために、君のためだけに、ボクは医療保険も使わずにこれらのクスリを信じられないほど高い値段で購っているんだから。そのためだけに、カラダだって売っているんだから。
　君が、この蒼い森の中で待っていてくれるのなら、ボク自身はどんなに汚れてしまっても構わない。森の中、人知れず咲く花。その一輪を守るために、ボクは君以外の誰を傷つけることも恐れないし──君自身を傷つけることも恐れない。ふふ、何だか矛盾してるね。今日のボクは少し苛立っていたから、何だかおかしいのかも知れない。
「英二」
「ん……」
「ボクのことが、好き？」
「ん……うん。不二が……好き。大好き」
　素直で従順で、穢れのない君。
「ボクから離れていかないね？」
「うん……行かない」
「じゃあ、英二はずっとここにいるといいよ。何にも考えなくていい。ボクが君を守る。永遠にね。だから、英二は考えないで。何も考えないで」
「眠たい……」
「おやすみ、英二。ベッドまで運んであげる。ボクと月が君の眠りを見守るよ」

　ベッドの中で、ボクはそっと英二のパジャマを脱がせてみる。胸に、背中に付いた、蒼黒い、痛々しい痣。ボクはその一つ一つに唇を寄せる。愛しい痕──。

　おやすみ、英二。

　君とここにいるために、ボクは全てを捨てるよ。だから、君も全てを忘れて……ね？



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Don't be afraid, BABY．









『蒼い森』は声優の堀江由衣さんの曲です。『嘘つきアリスとくじら号をめぐる冒険』というアルバムに入っています。
普通のラブソングなのだとは思うのですが、初めて聴いた時から「狂気の恋」のイメージが頭から離れなくなって。で、不二の狂気、とあいなりました。
何となくですが、ここの上に収めてある、「森へおいで」の続編かもしれません。